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固形燃料 [短歌]





さりながら行平ぐらと滾らせて固形燃料消えてしまへり  利井聰子

「飛聲」の先輩、利井聰子さんの第一歌集『迎撃のまなこと言へど』(短歌研究社)の中の一首。
家庭で使われることもあるようだが、「固形燃料」に出会う場といえば、料理屋や旅館など、何人かが集まって会食をするという場面だろう。固形燃料の上には陶製の行平が載せられている。行平といえば本来はお粥用なのかもしれないが、形が好まれてか一人用の鍋や煮物に使われる場合も多く、よく見かける。
賑やかだった宴も、おおかたの食べ物がなくなり、会話も途切れ途切れとなりはじめる。そんな時を見計らったように、ふっと消えてゆく固形燃料の炎。
それを機に一気に終焉へと向かう場の空気の変化を実感できるのは、この炎が心にもたらす変化を追体験できるからだろう。焔には場を支配する力があって、それが消えるときには同時に場の熱をも奪っていくものなのだ。

好きな歌がとても多い歌集なのですが、その中から十首選んでみました。

小指もて姑のひたひの白粉を伸ばすときふと滑る虹鱒
ごつそりと胃をとられたる兄もしや埴輪に吹ける風の溜り場
唸りごゑあげて過ぎたる春風に死者総立ちの墓地の夕暮れ
もしや私語さくらは白く暮れ残りそのさざめきのさきの死期かな
細路地にすれ違ふときつぼめたる蝙蝠ふとも凶器のかたち
つぼめたる日傘の尖がまだ熱いつるとんたんと食ふ冷うどん
耳底は青葉闇とや差し入れて竹の耳掻きまだ届かざる
仄くらき提灯の灯に動きゐる影ありやがてわたくしも影
巻きのぼりなほ追ひ越せぬ赤・白・青 年功序列のここ理髪店
とどめなく文字の雨降る辞書の森ルーペの中は波立つ泉

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o-24.k-160

僕の歌友で青森県の方に飛聲を差し上げて意見をお聞きしたところ、一番好きな歌人は利井聡子さんだと言われました。ご自分の気持ちとシンクロして感動されたそうです。その方を、飛聲にお誘いしてたのですが、飛聲の皆様方はレベルが高すぎてついて行けそうもないと断られました。彼女は今、残念ながら馬場あき子さんのかりんに入会されたそうです…。
by o-24.k-160 (2009-06-17 17:08) 

kiriko

o-24.k-160さん、こんにちは。
利井さんの歌集はぎふ歌会でも好評でした♪
利井さんの歌のファンの方は多いですね。(私もファンですが)
歌友の方は飛聲とはご縁がなかったようですね。残念です・・・。
by kiriko (2009-06-19 00:08) 

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