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鑑賞081「嵐」 [百題百日2008]

今日は鑑賞81日目。「嵐」の歌です。
暴風や暴風雨を表す言葉ということは誰もが知っているとは思いますが、会話の中で比喩的な表現以外に使われますか?
「今晩は嵐になりそう」なんて、小説の中に出てくる話だとか、相当昔の人の言葉のように感じられるのですが。

では、その、一番基本的な意味の「嵐」の歌から。
現実感の乏しい言葉、という感じで詠まれているものから2首、常套句を用いた歌を1首、ピックアップしました。
佐原みつる (あるいは歌をうたうのだろう)
窓際のテーブルを拭く手を止めて嵐がやって来るのだと言う
何でもなさそうな一瞬が内面の不安を暗示しているように思えるのは「嵐」の一語のせいだろう。
たとえばここに「台風」をもってくれば、ただ事歌になってしまうと思う。

我妻俊樹 (vaccine sale)
目ぐすりをさしながら聞く敷きたての途が嵐をさまよう話
新しい怪談ですか。
「敷きたて」の途がまだ、風景となじんでいないために、さまよう、という想像が自然に思われる。

原 梓 (題詠blog百首を走る。)
嵐の前の静けさ、とばかり思い込み柔らかきしあわせを逃がしたり
常套句が効果的に使われている。多分「嵐」が象徴性を失っていないのだと思う。
しあわせの本質とはこんなところにあるのかもしれない。

続いて、他の字と合わせてもう少し狭義の気候を詠み込んだ歌から。

村上きわみ (北緯43度)
みずからを吐き出すような気嵐をかさねて冬の深みにいたる
              ※ルビ 気嵐=けあらし
気嵐とは。
北海道留萌地方のことばなのね。
上句、写真では静的なイメージがあるが、ダイナミックな気象現象であることが感じられる。
>・気温が-15℃前後、海水温と気温の温度差が15℃以上の時に発生することが多い。
とあるので、相当厳しい寒さの中で起こる現象。それこそ、想像を絶する北海道の「冬の深み」だ。

最後は固有名詞に使われた歌。
固有名詞の人気ナンバーワンはジャニーズの「嵐」だったんだけど、メンバーの名前が思い出せない、だとか、の歌が多かったですね。ジャニーズの中に埋没しちゃっている感じだ。

FOXY (ぎゃらりーFOX通信)
嵐寛(あらかん)が片眼瞑って捕吏を斬る捕吏の一人が僕の父だよ
往年の大スター嵐寛寿郎。彼に斬られた無数の役者の一人が作中人物の父であった。その父は何度も何度もその話を作中の人物に話してきたのだろう。
そして、その大スターのおかげでまた、若き日の父に出会える作中の人物なのだ。

本田鈴雨 (鈴雨日記)
うねうねとほそながき坂のぼりつめ空と<青嵐歯科>に出会ひぬ
名前一つに出会うことにより、ふっと気分がかわることがある。
丘の上の歯科医院に「青嵐歯科」などという名がついていたら、身体の隅々まで、緑の風が吹き渡りそうだ。




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