So-net無料ブログ作成
検索選択

鑑賞100「終」 [百題百日]

2007年の最初の題は「始」、そして、最後の題は「終」でした。

いろいろなものに「終」があり、いろんな「終」の歌がありましたが、多くの人はそれぞれ違う終わりを詠んでも、このイベントの今回のラスト、ということを思ったのではないでしょうか。

まずはその、今回のイベントを詠んだ歌から。

 

(こはく) (プラシーボ)

冷え切った左耳にも届くよう題詠百首の点呼を終える

百首の最後に臨んで参加者はそれぞれ、いろいろな思いを抱いたことだろう。達成感を感じた人、開放感を味わった人、すでにあれこれ反省に入っている人。それを素直に詠まれた歌は多かったが、それだけだと、単なる日記となりがちだと思う。

こはくさんの歌ではその百首を点呼している。現実には歌は返事をしてくれないわけであり得ないことなのだが、点呼とされると一つ一つの歌がひとつずつ立ち上がって返事するような実在感が出てくる。

左耳は右脳とつながり感情的な部分を支配しているといわれているので冷え切っていた心が再び動き出すようなイメージだろうと思う。もっとも右脳左脳の話は右耳が利き耳の人の話で、例外が多く、私自身がその例外。いろんな情報から、多分こういう場合の左耳は、私の右耳とイコールの部分が多いと、判断しているのだが、実際にはかなり差異があるのかもしれない。

話は逸れるのだが、短歌の場合、使える音数が少ないので、かなりの部分、世の中の多くの人の共通項、というものを想定して利用しているところがあるのだろうと思う。詠む時も読む時もその想定されるラインがどの辺にあるか、ということを意識するのは大事なことなんじゃないかしらん。

 

続いて、それぞれの「終」の歌を。

 

(黄菜子) (月待ち人の窓辺)

交代の儀式終えたる衛兵はまたみぎひだりわかれゆきたり

ロンドン観光名所。(どこだったか、名前が出てこない)

衛兵たちは非常に様式的な動きをするので、その動きそのものに心理的な意味があるように思えてしまう。短い時を過ごしたあとに別の方向へと歩みだすのは人の人生の一コマを思わせるところがある。

まったく個人的な余談だが、むかし、ちょうど、この衛兵たちのすぐ前で、偶然に人に会って、あいさつを交わして別れたことがある。その後、その方は亡くなり、考えてみれば、あのときが最後だったのかもしれない。この歌を読んで、そんなことを、ふと思った。

 

(大辻隆弘) (大辻隆弘 題詠100首のために)

終らうとしてゐる雨があかるんで見えてた、朝になるまへの窓

物事の終りにも明るいものと暗いものがある。止みかけの雨は前者の代表的なものだろう。からっと明るいのではなく、陰翳を帯びた明るさである。

 

(内田かおり) (題詠2006深い海から)

最終の電車の中は寂しげな眼差しを持つ人の多くて

これは、客観的にその通りだと思う。その一列車、二列車前の陽気さとは対照的。

というのも、最終電車に乗るのは仕事にくたびれ切っていても、遊びに夢中になっていても、その電車に乗らなければ、という冷静な自制心を持った人たちがほとんどだから。生活に自らを添わせるのは、ある意味さびしいことである。

よく見ている歌だなあ、と思った。ただ、歌の最後が言いさしになっているのが落ち着かなくって気になる。

 

(やすまる) (やすまる)

終点で起きられないと降ってくるさとうさらさらさらさようなら

公共の交通機関の中で起きられない時ってこんな感じだ。

 

(おとくにすぎな) (すぎな野原をあるいてゆけば)

終点は点ではなくてこんなにも青がひろがる砂にころがる 

いますぐこんなところにでかけたい気分。

「点」との対比で「青」も「砂」も無限に広がる感じ。

 

 (題詠100blog-あいっちのうたあそび。)

零日の一生を終えしいもうとがわたしに托したものを知りたし

わたしにもそのような弟がいたが、残された兄や姉にとっては課題のようなものなんだろうか。どこか、罪の意識のようなものが混じってるような気がする。

もう少し、推敲の余地のある歌のような気がしますが。

 

(萱野芙蓉) (Willow Pillow)

チェロの音が秋へと傾ぐ終楽章わが裸身知るをとこは去りて 

菅野さんの歌は華麗なのだが、うわっすべりではないところが魅力。

下句、迫力あるなあ。

 

(寒竹茄子夫) (鮎と銀杏)

鮭の身を削ぎて透けゐる一片の肉 たましひの終末を視む

スモークサーモンだろう。たましいの終の姿なのだろうか。「削ぎて透けゐる一片の肉」がいかにもそれらしい姿だ。

 

~~~~~~~~~~

こちらのブログにおこしの皆様、拙い感想に百余日お付き合いくださいまして、ありがとうございました。

五十嵐さまの2008年の題詠イベントもすでに参加表明を受け付けていらっしゃるようです。

今年もまた、そちらでみなさまにお会いできると嬉しく思います。

それでは、2007の感想はこれにて。


nice!(0)  コメント(10)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 10

佐山みはる

きりこさん、百題鑑賞、おつかれさまでした!
一言、この言葉をお伝えしたくて参りましたらば、、、、拙歌へのコメントありがとうございます(^^)

写実の中に微妙な心の動きを表せたら・・・と思って、結句をいろいろ差し替えたりして、作歌したのを思い出しました。
うれしい鑑賞をしていただきました。

2008年題詠もまもなくスタートですね。
出走時期は未定ですが、たぶん参加すると思います。
きりこさんの作品、楽しみにしていますね。
by 佐山みはる (2008-02-14 21:15) 

うめさん

希理子様

毎日、「百題百日」を楽しく拝読致しました。
そして、短歌は奥が深くて面白いことを教えて頂きました。
今日で「百題百日」が終わってしまうことが寂しいです。

また、私の拙い歌を取り上げて下さいまして
ありがとうございます。
とても自信になりました。
特に「行商のおばさん専用電車」の歌は、希理子様が
隣りに乗り合わせてらしたように、私の心理を
読んで下さり、笑ってしまいました。

昨年初めて参加しまして、題詠の面白さに嵌ってしまいました。
今年は名前を替えましてエントリーしました。
今年も希理子様のお歌と批評から、
たくさん学んでいきたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。(梅田啓子)
by うめさん (2008-02-14 21:45) 

kiriko

佐山様
ありがとうございます。
佐山さんは参加者ごとの感想なので、大変ですね。
そちらもがんばってください。
そして、今年もまた、佐山さんの題詠マラソンの歌を拝見したいです♪

うめさん(これからは梅田様とお呼びした方がいいですね♪)
いたらない感想でしたが、最後までお読みくださって、ありがとうございました。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
by kiriko (2008-02-15 08:53) 

すぎな

百題すべての鑑賞、おつかれさまでした。
最後のうたもとりあげていただき、うれしいです。(去年はほんとに走り終えてごろんとなるようなぎりぎりゴールだったので、今年はもう少し余裕をもって走りたいと思います。)ありがとうございました。

今回ももうすぐスタートですね。どうぞよろしくおねがいします☆
by すぎな (2008-02-18 15:08) 

kiriko

>すぎなさん
なんとか100題を終えることが出来ました。
2008のスタートまで、あと、2週間弱、ですね。
この時期は、今回はどんな風に詠もうかなあ、とあれこれ考えるのが楽しい時期です。(具体的なことは題を見てからでないと決められないんですけどね)
どうぞ、今後とも、よろしくお願いいたします。
by kiriko (2008-02-18 23:14) 

今泉洋子

希理子様
 100題を丁寧に読んで頂き有り難うございました。みなさまの
それぞれの作品に的確な評をいただき、とても勉強になりました。
私の拙い歌も採りあげていただき元気をいただきました。
 今年もご一緒できて嬉しいです。宜しくお願い致します。
希理子さんの益々のご健詠草をお祈り申し上げます。
by 今泉洋子 (2008-02-20 20:15) 

鈴雨

希理子さま、はじめまして。
佐山みはるさんのブログから、こちらへおじゃましました。

評がとても勉強になり、希理子さんの視点に多くを学ぶ思いです。
拙歌もいくつか取り上げていただき、ありがとうございました。

今年もご一緒させていただきます、よろしくおねがいいたします。
今回は、もっとじっくりと丁寧に、詠んでいきたいと思っております。

ともあれ、百題鑑賞おつかれさまでした。
by 鈴雨 (2008-02-20 20:46) 

kiriko

>今泉様
わたくしの拙い感想に最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
私なりに、一生懸命感想を書かせていただいたのですが、ブログという場所の性格上、これで良かったかと、いろいろと悩みます。
歌会などでしたら、簡単に反論が出ることでも、なかなかこういう場では出にくいので、その分怖さもあります。
どうか、わたしの感想は一つの意見として受けとめてくださいませ。
どうぞ、今年の題詠でも、よろしくお願いいたします♪

>鈴雨様
こちらのブログまでお越しくださいまして、ありがとうございます。
今泉様へのコメントにも書きましたように、どうぞ、わたしの感想は一つの意見として、どうぞ、鵜呑みになさらないでくださいね。
どうぞ、今年の題詠でも、よろしくお願いいたします♪
by kiriko (2008-02-21 08:40) 

萱野芙蓉

希理子さん、遅ればせながら100首の感想お疲れさまでした。
読むほうが詠むより力が要るんじゃないでしょうか。(こう思うのは私だけかな)
読み手の力量によって歌の顔や表情は変わってきますね。
読み手にたいして不親切とも思える拙作もていねいに読んでくださり、
コメントいただきまして本当にうれしく思いました。
ちょうだいしたお言葉のおかげで、自分でも好きになってあげられる歌が増えました。
本当にありがとうございました。

来週から2008も始まりますね。今のところ迷っていますが、
身の回りがもう少し落ち着いたら、ぜひまたご一緒したいです。
by 萱野芙蓉 (2008-02-24 00:16) 

kiriko

芙蓉さん、ありがとうございます。
読む方は、わたしの場合、ある程度、心が落ち着いた状態でないと、できない、ということが最近分かりました。
詠む方はひどい歌でもなんとか歌い続けることはできるんですけどね。
いつでも同じ状態でできないといけないんでしょうけれど。

2007の芙蓉さんの歌はほんとに好きな歌がとっても多くって、うれしい出会いがたくさんありました。
2008でも芙蓉さんの歌と出会えると嬉しいな♪
では、また~!
by kiriko (2008-02-24 23:58) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。