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鑑賞099「茶」 [百題百日]

今日取り上げる題は「茶」です。

植物としての「茶」、飲み物としての各種のお茶、色名…。守備範囲の広い言葉ですね。しかも、「茶」から遠く離れた意味になった熟語も豊富にあります。

いろんな用い方のできる語でしたが、多かったのはお茶を飲んでいる、あるいは前にしている場面。その中でも紅茶を詠んだものが多く、既視感のある場面が多いように思いました。

そういう場面って、テレビ雑誌など、あらゆるところに溢れているでしょう?そんな情報が知らず知らずのうちに染み込んでしまっていて、すっと歌を詠んでしまうと、思わず影響されるってことになるのかもしれませんね。

 

では、最初は茶畑の歌。

 

(春畑 茜) (アールグレイ日和)

茶畑のみどりのうへを渡りゆく風よ駿河の夏のさかりを

静岡は茶の産地として有名ですが、「駿河」とすることで、のびやかな風景が開ける。

 

続いては飲み物としての「茶」の歌。

 

(原田 町) (カトレア日記)

熱々の焙じ茶を飲み暑気払ひつくつく法師もう鳴きはじむ

若いころは冷蔵庫できんきんに冷やした麦茶やジュース類で夏の喉をうるおすことを好むが、だんだんと、あまり冷たいものは飲みたくなくなる。体の自然に従えば暑い時には暑いもので暑気払いを、ということは言われていても、若いうちは即時に熱を発散させなければならない理由があったんだろう。しかし、年齢とともに自分の体と対話することにも慣れ、ゆっくりと過ぎてゆく季節の感じ方も、また変化してゆく。

 

(うめさん) (今日のうた)

いつしらに番茶も出花はとうに過ぎいよよ渋茶のおいしい季節

たぶん「渋茶」の年齢の方が自らの年齢を楽しんでいる様子を詠んでいらっしゃると思うのだが、歌には淡々と茶のことしか出さず、あとは読者にゆだねている。下手に自分のことだと分かるようにしてしまうと、説明的になってしまうだろうと思う。

 

(佐原みつる) (あるいは歌をうたうのだろう)

紅茶葉がひらくまでなら、そう言って窓辺の椅子に座り直した

これも、ドラマの一場面のような、といえばそうなのである。「紅茶葉がひらくまでなら」などというのも、気障ったらしいと言えないこともない。しかし、この歌が面白いなと思うのはその切り取り方によるのだろう。まず、場所がどこかわからない。ただ「窓辺の椅子」なのである。そして、「そう言って」とあるのでもうひとりの人物がいるのは確かだが、その人の情報は全くない。その上、短歌では主語のない人の主語は我として読む、という約束があるので、この座り直した人物は我、ということに一応はなるのだが、小説の中の一部のような散文的な文体のせいか、この歌を読みながら感じる視点はこの作中の人物の目から見た視点というより、作中の人物の全体像が見える、別のところからのもののようなイメージを捨てきれない。そして、この人物の感情はただ、歌の中に流れる気分のようなものとしてしか類推できない。その、分らないだらけの中に浮きあがる、この人物の姿と、感情の流れのようなものが魅力的だと感じる。

 

続いて茶の字を含む言葉を用いた歌から。

 

(新井蜜) (暗黒星雲)

キッチンで物音がする午前二時 親父がひとり茶碗酒飲む

コップ酒は知っていたが、茶碗酒ですか。その辺にあったものに無造作に酒をついで飲んでいるのだろう。コップ酒以上に荒んだ印象がある。しかも時間は午前二時。その、親父の孤独にただ耳を澄ましている作中の人物がいる。

 

(大辻隆弘) (大辻隆弘 題詠100首のために)

茶番だとおもふ、私刑に向はむとする欲望が論理化されて

具体とは対極にある歌。抽象度の高い言葉で思いっきり物事を抽象化したことにより、逆に「茶番だとおもふ」という独り言めいた言葉がが浮かび上がる気がする。

 

(夜さり) (夕さり夜さり)

「しばらく、しばらく」荒事役があらはれて団十郎茶の袖ひるがへす 

 歌舞伎なのだろう。歌舞伎は全く知らないのだが、「しばらく、しばらく」という声と、役者の様式美って感じの仕草が目に浮かぶように思う。

 

(霰) (徒花日記)

赤箱のイヴ・サンローラン吸いながら明日をみていた御茶ノ水駅

御茶ノ水駅周辺といえば学生街、というのはいくら東京を知らない私でも、かろうじて知っている。バブル期の女子大生だろうか。ボディコンの洋服にくっきり太い眉の時代というのは今から考えると、女を武器とすることを肯定しつつも自己実現することが可能だと女性たちが思い始めた時代だったか。しかし、作中の主人公を含むおおかたの女子学生にとってはそうではなかったのだろう。「明日をみていた」と懐かしむように回想されている。

 

~~~~~~~

感想も、いよいよ、最後の一題を残すのみとなりました。

なんだか、あっという間だったような。

なんだか、終わってしまうのが惜しい感じ。

なので、明日は一日お休みして、明後日に最後の題をアップします。

どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ。

 


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コメント 2

原田 町

きりこ様
11月1日から始められた観賞もあと一題ですか。毎回楽しく読ませていただき、かつ勉強にもなりました。また、私の拙い歌も再三お取り上げいただき感謝しております。
来月から始まる題詠2008にもまた参加して走ろうと思っております。私も力をつけて村本様のお歌を鑑賞できるようになりたいと願っておりますが......。
by 原田 町 (2008-02-13 10:01) 

kiriko

原田様
明日でいよいよ、2007年の鑑賞も終了の予定です。
題ごとの鑑賞は初めてだったのですが、いろいろな発見があって、なかなか楽しかったです。

>私も力をつけて

わたし自身、力不足を自覚しつつ鑑賞を書いていますので、そのようにおっしゃられると困ってしまいます(汗)。
原田さまの鑑賞もぜひ、読みたいです♪

2008年もいよいよ始まりますね。
どうぞ、また、よろしくお願いいたします。
by kiriko (2008-02-14 00:22) 

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