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鑑賞091「命」 [百題百日]

91番目の題は「命」。「命」一字で、しかも漢字となると、ものすごく重たいテーマが前面に出てきがちですね。それだけに、自分の能力を超えた内容を詠もうとしてしまう傾向があるように思います。自分の手に余るものを詠もうとすると、借りものになってしまうことになるのではないかしらん。自分の手に掴める範囲を見極めることもまた、大事なことなのではないでしょうか。

 

(瑞紀) (歌信風(かしんふう))

じゃがいもがふいに崩れるようにして父の命は暮れてしまいぬ

かろうじて形を保っていたものが、あっという間に崩れる。実感を伴う光景だ。人の死の喩として、とてもリアリティがあると思う。

ただ、下句は「暮れてしまいぬ」というのがいかにも工夫しました、という感じで、こなれていない不自然な感じを与えることが気になった。また、題だからしょうがないといえばしょうがないのだけれど、「命」もむしろ言わない方がいいような気がする。

 

(春畑 茜) (アールグレイ日和)

この夏の命はここに黄金(わうごん)のあぶらへ薄き蓮根(はすね)を散らす

この場合の「命」は真髄といったところだろうか。日常のほんの一瞬に、ここにこそ全てが凝縮しているようなものが見えるときがあるのだが、この歌も、そんな場面だろう。

「黄金」「蓮根(はすね)」と言った語に導かれ、読者はその一瞬を追体験する。

 

(小早川忠義) (ただよし)

軽々しく両手を斜め下に置き命などとは言ふてくれるな

あと何年か経ったら、この歌を読んでも、あの、体を漢字の形にする芸を思い出せなくなってしまうような気がするが、言葉の重さと芸の軽さのギャップがこの芸の面白さだろうと思う。

しかし、そのギャップに違和を感じることもある。割り切れない部分を素直に詠んだ歌だが、長い年月の経った後にこの歌を読んだら、もしかしたら、もっと複雑なものが残っているかもしれない。

 

続いて「命」の文字を含む語を使った歌から。

 

(みち。) (幸福アレルギー)

もう少し生きると決めたマジックで生命線を書き足す夜更け

マジックの太くて黒々とした線に力強さを感じる。

 

(佐原みつる) (あるいは歌をうたうのだろう)

無口だと思われていたその人が養命酒の効能を説き出す

ごくたまに、そんな場面に遭遇するが、「養命酒」がいい。

ふだん無口な人が突然FXについて語り出してもねえ・・。

 

(萱野芙蓉) (Willow Pillow)

チャウシェスク斃れにき

薔薇水はげに甘かりきルーマニア革命通貨暴落の夜も

どこか過剰なものを感じさせる文体が善悪、光と影の差の非常に大きい世界を作り出している。


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